ストレスとは
ストレスとは、心身の負荷、あるいは負荷をかける原因になったことを指します。ストレスがかかることによって、私たちは不安定な状態になってしまいます。
例えば、相手が冗談で言ったことも、本人が気分を害してしまうと「ストレス」に含まれます。まったくストレスのない人というものは存在せず、だからこそ私たちはストレスとうまく付き合っていく必要があります。
適度なストレスは必要
ストレスというと、悪い意味で捉えられることがほとんどです。しかし、ジョギング、課題に向かって前向きに努力するときの緊張感といった、良いストレスも存在します。
このようなストレスは、適度であれば心身への好影響をもたらします。具体的には、交感神経を目覚めさせ、判断力・行動力を高めます。
あくまで「適度な」という条件付きですが、ストレスは私たちにとって大切なものでもあるのです。
過度なストレスは心身に
悪影響を及ぼす
一方で不快感や疲労感のみを残すストレスが溜まっているときには、心身に悪影響を及ぼします。
また、先程ご紹介した「良いストレス」になり得る運動やほどよい緊張感も、行き過ぎると「悪いストレス」になります。
ストレスが限界に達したときに
見られる症状
ストレスが限界に達する――つまり「適度なストレス」ではなく「過度のストレス」になったとき、私たちの心、身体には以下のような症状が出現します。
心の症状
- 気持ちが沈む
- イライラする、怒りっぽくなる
- やる気が出ない
- 集中力、注意力の低下
- 楽しいはずのことに興味が持てない
- 特別なことがあったわけではないのに悲しくなる
- 「どうせうまくいかない」と考える
- 同じことや悪い結果ばかり考える、もしくは何も考えられない
- 重要な決断ができない、したくない
- 自分が無価値だと感じる
- 自分を責める
身体の症状
- 眠れない、熟睡できない
- 寝すぎてしまう
- 食欲低下、もしくは暴飲暴食
- 全身倦怠感、疲労感
- 頭痛、めまい
- 肩こり、腰痛
- 動悸、息切れ
- 腹痛、便秘、下痢
- ふと涙が出る、涙が止まらない
ストレスが引き起こす病気とは
ストレスを原因として起こる病気には、以下のようなものがあります。
自律神経失調症
自律神経失調症とは、ストレスによって自律神経が乱れることで起こる、頭痛、不眠、疲労感・倦怠感、不安感、意欲の低下などの症状の総称です。
治療では、薬物療法に加えて、生活習慣の改善、ストレスのコントロールが必要になります。
うつ病
ストレスなどによって脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、心身にさまざまな不調をきたします。
気分が沈み、物事に興味や関心を持てなくなります。睡眠障害や食欲低下、倦怠感などの症状も重なり、出社や登校、あるいは外出そのものができなくなることもあります。
治療では第一に休養が必要です。加えて、薬物療法や精神療法、カウンセリングなどが行われます。
不安障害、パニック障害
前触れもなく、突然に動悸、息苦しさ、めまいなどの発作が起こり、その発作を繰り返してしまう障害です。ひどい発作では、このまま死んでしまうのではないかと思うほどの強い不安に苛まれます。
また発作が起こったらどうしようという不安から、外出が難しくなることもあります。
治療では、薬物療法、精神療法を行います。
適応障害
状況・環境の変化などによって苦痛が生じ、そのことで感情・行動に症状をきたす障害です。
不安感、憂うつ、動悸、めまい、ふるえなどの症状をきたします。
転職や転校、クラス替え、離婚などの個人的な出来事から、天災など社会的に大きな出来事などもきっかけとなります。
アルコール依存症
長期にわたる飲酒によって、アルコールなしでは気分転換ができず、そのために酒量がさらに増えていく依存症です。大きなストレスを抱えている人、仕事を一人で抱え込んでしまう人が陥りやすい傾向があります。
ひどく悪化し、仕事中や出社前にもアルコールを飲んでしまうケースがあります。食事を含めた日常生活も疎かとなり、健康や家族関係にも悪影響を及ぼします。
摂食障害
食後に意図的に吐いたり下剤・利尿剤を使用するなどして極端に痩せた体型を維持しようとする「拒食症」と、短期間で大量の食事をしてしまう「過食症」に分けられ、どちらもストレスなどを原因とした、心因性機能障害です。
拒食症の人が過食症へと移行することもあります。
過敏性腸症候群
ストレス、疲労などを原因として起こると言われている病気です。腸の働きに異常が生じ、便秘、下痢といった排便に関わる症状をきたします。便秘が続く「便秘型」、下痢が続く「下痢型」、便秘と下痢が繰り返される「混合型」があります。
突発性難聴
あるとき突然に起こる難聴です。通常、左右いずれかの耳のみで難聴をきたします。また、耳鳴り、めまいを伴うこともあります。
はっきりとした原因は分かっていないものの、心身のストレスの関与が指摘されています。
発症後1週間以内に治療を開始できるかどうかが、予後を大きく左右します。
ストレスとの上手な付き合い方
睡眠の質を上げ、休養をとる
日中にしっかりと活動する、適度に日光を浴びる、夕食後はできるだけゆっくり過ごす、就寝前のテレビ・スマホの視聴を避ける、寝酒を控える、寝室の環境を整えるなどで、睡眠の質を上げましょう。
起床時間は休日を含め一定にすることも重要です。就寝時間にこだわり過ぎる必要はありませんが、布団に入る時間はできるだけ一定にしましょう。
また、疲れているなと感じたら、意識して休養をとるようにしてください。
栄養のある食事・
好きなものを食べる
ビタミン、ミネラル、アミノ酸、脂肪酸などを必要量摂取するようにしましょう。ビタミンB1、B2、B6、B12は、うつ病のリスクを下げると言われています。
暴飲暴食は避けるべきですが、栄養にこだわり過ぎるあまり、好きなものを完全に断つのは逆効果です。好きなものの内容にもよりますが、連日そればかり食べるというような極端なことでなければ、適度に食べた方が心身へのストレスが軽減されます。
続けられそうな運動を取り入れる
適度な運動は、ストレスの解消に非常に有効です。
好きな運動があれば、それを続けましょう。特になければ、続けられそうな運動を見つけてください。景色を楽しむ、友人と楽しむ、運動後の食事・カフェを楽しむといった要素を取り入れると、継続しやすくなります。
また、運動をサボってしまったときにもあまり気にしないようにしましょう。サボってしまった日があっても、その後も続けることが大切です。
気の合う友人と過ごす
気の合う人と一緒に楽しい時間を過ごすだけで、ストレスが解消されます。
また、悩みを相談してみるのもよいでしょう。解決するとは限りませんが、人に話すだけでもすっきりします。相談し合える友人関係を築きましょう。
ストレスがうまく
処理できない時は
当クリニックにご相談ください
散歩にでかけよう、音楽を聞こう、友人と遊ぼう、運動をしようといった自分なりのストレス対処法を既に実践している方でも、過度なストレスがかかっていたり、適切な対処法が実践できていないなどで、うまくいかないこともあります。
そういったときには、どうぞお気軽に当クリニックにご相談ください。「まだ大丈夫だろう」「自分の努力が不足しているだけだ」と受診を遅らせているうちに、うつ病などを発症してしまうケースは少なくありません。
限界に達するまで一人で我慢するのではなく、辛いと思ったときに相談することが、予防や早期発見において非常に大切になります。