大人の発達外来では、成人の発達障害について診断・治療をします。
仕事でミスが続く、通常は考えにくいようなケアレスミスをしてしまう、努力して人間関係を築こうとしているがうまくいかない、ご家族や同僚、ご友人に指摘されたというときには、お気軽に当クリニックにご相談ください。
診断を受けることがこわい、というご不安もあるかもしれません。しかし、診断を受けて病気が確定するわけではありません。あくまで今後の治療・対応を決めるための診断と診断名です。症状の程度に応じて、当クリニックが、患者さんが今後少しでも安心して社会生活を営めるよう精一杯サポートさせていただきます。
もしかして発達障害?
なんとなく生きづらさを
感じていませんか?
大人の発達障害が、近年ようやく少しずつ認知されるようになってきました。しかし、やはり子どもの発達障害と比べると、「大人なんだから」という患者さんご自身、また周囲からの意識が働くためか、なかなか受診へとたどり着けません。
社会生活を送る上で、なんらかの「生きづらさ」を感じているときには、ぜひ一度当クリニックにご相談ください。
大人の発達障害とは
大人の発達障害も、子どもの発達障害と同様に、生来的な脳機能の“発達の偏り”によって生じるものと言われています。
つまり、ご両親の愛情、ご自身の努力の不足といった、環境が原因になって起こるものではありません。
発達障害かもしれないと感じたとき、まずはこのことを認識することが大切です。
大人の発達障害の特徴
これまで「学校」という比較的小さな社会の中で見過ごされていた・大きな問題にならなかった発達障害の特徴が、大人になり責任を伴う大きな社会に出たときには、より顕在化しやすくなります。
これまで「少し変わった子だな」と思われていたのが、「ミスが多い人だ」「意志疎通ができない」といった認識に変わってしまうのです。
そのことが原因で叱責を受けたり、自信を失ったりして、ストレスを抱えながら働く・生活する、休職や退職に追い込まれるということが起こります。中には、二次的にうつ病を発症してしまう方もおられます。
診断のつかない
グレーゾーンもある!
発達障害では、グレーゾーンという言葉が使われることがあります。
これは、発達障害の診断基準を完全に満たすわけではないものの、いくつかの発達障害の特徴が見受けられる状態を指します。
診断基準を満たしていないわけですから、診断名でも病名でもありません。通常医師からは、「診断基準は満たしていませんが、発達障害の傾向が見られます」と伝えます。
ただ、グレーゾーンだから対処法が何もないということではありません。どのような発達障害の傾向が見られるかが分かることで、必要な対応が見えてきます。
大人の発達障害チェックシート
- 仕事などで難所を乗り越えたのに、詰めが甘く失敗することが多い
- 計画を立てること、またそれを計画通り実行することが苦手
- 気をつけているのに重要な約束を忘れる、納期に間に合わない、遅刻してしまうことが多い
- 長時間座っていられない、じっとしていられない
- 単調な仕事に集中できない
- 会話しているときに相手の話を遮ってしまう
- 相手の発言・指示の行間を読めずに失敗してしまうことが多い
- 忙しくしている人の邪魔(今聞く必要のないことを聞いてしまう等)をすることが多い
大人の発達障害の主な症状
自閉スペクトラム(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)とは、社会コミュニケーションの障害、限定された反復的な行動を特徴とする発達障害です。
自分のペースで一つのことをコツコツ集中して行うことができる反面、以下のような場面で困難が生じます。
- 暗黙のルールが理解できない、場の空気が読めない
- 相手との適切な距離をとれない
- 冗談を真に受けて傷ついてしまう
- 曖昧な表現を理解できない、行間を読めない
- 感情、気持ちを人に伝えることが難しい
- 手順や時間などに強いこだわりがあり融通が利かない
- 関心を持てる領域が狭い、偏る
- 予定、ルールから逸脱した変更に混乱する
注意欠如・多動症(ADHD)
大人の注意欠如・多動症(ADHD)は近年、増加傾向にあります。
不注意(集中できない)、多動性(じっとできない)、衝動性(考える前に行動してしまう)という3つの特徴をもつ発達障害です。
具体的には、以下のような場面で困難が生じます。
- すぐに気が散り、集中できない
- 重要な約束も忘れてしまう、期日を守れない
- ケアレスミスが多い
- 会議などで長時間じっと座っていられない
- 人の話をじっときいていられない
- 人の話を遮ってしまう、喋り終わる前に答えてしまう
- 思いつきで行動してしまう
- 人のものを無断で借りてしまう、使ってしまう
- 順番を守ることが難しい
学習障害(LD)
全般的な知的発達の遅れは認められないものの、特定の能力(聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する)において、その習得・実践に困難をきたす障害です。
注意欠陥・多動症(ADHD)と密接に関係しており、しばしば合併します。
主に、以下のような場面で困難が生じます。
- 一単語としての認識が難しく、一文字ずつ読む
- 文章のどこを読んでいるか分からなくなる、文字・行を飛ばす
- 形や音の似ている字の見分けがつかない、読み間違える
- 漢字を正確に覚えていない
- 文字の大きさや形が一定でなく枠からはみ出す
- 筆圧が安定しない
- 暗算ができない、指を使ってしまう
- 筆算における繰り上がり、繰り下がりが理解できない
- 九九が覚えられない
大人の発達障害の治療法
発達障害は、生来的な脳機能の“発達の偏り”によって起こる障害とされています。そのため、根本から完全に治すということはできません。
しかし、患者さんやご家族がどのような場面で困難や辛さを感じているかを把握し、環境を整えたり、社会生活をできるだけ円滑に営めるようスキルを身に付けたり、お薬を使用することで、困難・辛さを軽減することが可能です。
的確な診断
医師が問診にて、患者さんが抱えている困難・辛さなどをお伺いします。また、現在や子どもの頃の周りの環境、人間関係、既往歴などについてもお尋ねします。
幼少期のことは覚えていないこともあるでしょうから、必要に応じてご両親などかつての養育者にご同席を願うこともあります。母子手帳や通知表、日記などがございましたら、そちらも重要な情報となります。
以上のような情報を得た上で検査を行い、診断します。
薬物療法
症状や状況に応じて、抗うつ薬、抗精神病薬、気分安定薬、アトモキセチン(非中枢神経刺激薬)などのお薬を処方します。
当クリニックでは必要最小限の投薬に留め、不要なお薬は使用しません。ただし、ご自身に合った薬が見つかるまで、時間がかかることがあります。
自分に合った対処法を
身に付ける
カウンセリング、ソーシャルスキルトレーニング(SST)などによって、患者さんに合った対処法・スキルを身に付けます。
ソーシャルスキルトレーニングとは、場面に合わせた適切な言葉・声量・態度、人に話しかけるタイミング、相手の意図・状況を考えることなどを学習するプログラムです。
環境を調整する
患者さんの困難・辛さを、環境を調整することで軽減します。自分のデスク周りを集中しやすい環境に整える、メモを取る習慣を身に付ける、家族にサポートをしてもらうといったことです。
職場、さまざまな支援機関に協力を求めることもあります。支援機関については、当クリニックでご案内いたします。
大人の発達障害の検査
WAIS-IV知能検査、Rorschach test、P-Fスタディ(Picture Frustration Study)などを用いて検査をしています。