認知症はどんな病気?
認知症とは、老化に伴って発症する病気の1つです。脳の細胞が死んだり、働きが悪くなることによって、記憶力や判断力などに障害を起こし、日常生活、社会生活、また対人関係にも支障をきたします。
現在、国内の認知症患者は600万人以上にものぼっており、高齢化がますます進む今後は、さらなる増加が予想されます。
(公益財団法人生活保険文化センター.”認知症患者はどれくらい?”. 公益財団法人生活保険文化センター.2021.(2022-02-28))
認知症は大きく、以下のように分類されます。
アルツハイマー型認知症
脳の海馬を中心に萎縮が見られるタイプの認知症です。
もの忘れなどの認知機能障害、徘徊、物盗られ妄想などの特徴的な症状を持ちます。
脳血管性認知症
脳の血流が悪くなり、一部が壊死して起こるタイプの認知症です。脳梗塞や脳出血を主な原因とします。
認知機能障害、手足の痺れ、感情のコントロールができないといった特徴的な症状を持ちます。
レビー小体型認知症
神経細胞に生じる特殊なタンパク質「レビー小体」によって神経細胞が死んでしまうタイプの認知症です。はっきりとした脳の萎縮が画像検査で認められないことがあります。
注意力や視覚における認知機能障害、幻想、妄想、抑うつ、睡眠時の異常行動といった特徴的な症状を持ちます。
前頭側頭型認知症
神経細胞においてタンパク質が変性したかたまりが生じ、前頭葉や側頭葉で萎縮が認められるタイプの認知症です。
理性的な行動ができない、言葉が出づらいといった特徴的な症状を持ちます。
認知症の中でも、比較的若い世代(40~60代)での発症が見られます。
認知症の症状
中核症状
記憶障害
記憶の機能に障害をきたします。
初期には特に新しいできごとや事柄についての記憶が難しくなり、進行すると古い記憶も失われていきます。
見当識障害
年月・時刻・自分の居場所についての把握(見当識)に障害をきたします。
初期には時間や季節の感覚が低下します。次には、自分が今どこにいるのか分からないといったことも起こります。さらに進行すると家族など親しい人の生死、自分の年齢や誕生日なども分からなくなります。
理解・判断力の障害
思考力が低下し、複数のことが重なるとそれぞれを分けて考えることが難しくなります。また、ちょっとした変化にも混乱をきたしやすくなります。
具体的には、駅の自動券売機や改札の利用ができない、銀行のATMの操作ができない、必要のない高額な買い物をしてしまうといった変化が挙げられます。また、乗り物の運転にも危険を伴うようになります。
実行機能障害
計画を立てること、またその計画に基づいて実行していくことが難しくなります。
以前はできていた複数以上の料理の同時並行ができない、衣類を正しく身に着けられない(下着をズボンやシャツの上から身につけてしまう等)といったことが起こります。
失語・失行・失認
音声や文字からの言語の理解や表現ができない「失語」、適切な手順で道具を扱い目的を達することが難しくなる「失行」、目から入った情報を正しく認識できない「失認」などが見られます。
行動・心理症状
上記のような症状が重なると、患者さんは強い不安や混乱に陥り、それと同時に自信を失います。また、認知症への十分な理解がない場合の周りからの厳しい指摘は、それに拍車をかけます。
そうした結果、以下のような行動・心理症状が出現することがあります。
- 興奮
- 暴言、暴力
- 暴食
- 介護の拒否
- 妄想、幻覚
- 抑うつ、不安、無気力
- 徘徊
- 不潔行為
- 睡眠障害
- 昼夜逆転
「認知症によるもの忘れ」と
「加齢によるもの忘れ」の違い
誰でも、約束や出来事、人の名前を忘れてしまうということはあります。そして、年齢を重ねていくにつれて、そういったもの忘れは多くなります。これは老化現象のうちの1つであり、認知症に伴うもの忘れとは区別します。
「認知症によるもの忘れ」と、「加齢によるもの忘れ」は、具体的にどういった違いがあるのでしょうか。認知症の早期発見にも役立つ違いですので、ぜひご参考ください。
加齢
若い方を含め誰にでも起こる、加齢によるもの忘れです。
- 体験の一部のみをピンポイントで忘れる
- ヒントを与えられたり指摘されると思い出すことができる
- 時間や場所などは正しく覚えていることが多い
- 日常生活に支障がない範囲に留まる
認知症
認知症に伴うもの忘れです。主に、以下のような特徴を持ちます。
- 体験そのものをすっぽりと忘れる
- ヒントを与えられたり指摘されてもの思い出せない(思い出したふりをすることはある)
- 時間や場所についてもはっきりと覚えていない
- 日常生活に支障をきたすことがある
認知症のリスクを高める
生活習慣病・歯周病
認知症を完全に予防することはできません。しかし、そのリスクを下げることは可能です。
以下のような疾患に注意し、診断を受けたときにはきちんと治療に取り組みましょう。
高血圧
認知症の1つに、脳の血流が悪くなることで一部が壊死して起こる「脳血管性認知症」があります。
高血圧の方は、そうでない方と比べると、この脳血管性認知症のリスクが高くなることが分かっています。
予防のためには、減塩を中心とした食生活の改善、適度な運動習慣、禁煙が重要となります。
糖尿病
特にアルツハイマー型認知症において、糖尿病の方はそうでない方と比べて発症リスクが1.2~2.3倍高くなると言われています。
これは、糖によってタンパク質の糖化が進み、酸化ストレスが神経細胞の変性に影響しているためと考えられています。また、動脈硬化の原因にもなり、脳血管性認知症のリスクを高めます。
予防のためには、食べ過ぎや飲み過ぎを控え、適度な運動に努めることが重要です。
歯周病
歯を失う原因としてもっとも多いのが歯周病です。歯を失うことで噛む力が低下し、脳の中枢神経への刺激が少なくなります。
しばらく歯科医院に行っていない方は、定期健診を受けましょう。また歯を失ってからも、入れ歯やインプラント、ブリッジなどの治療を受けることで、噛む力をある程度取り戻すことが可能です。
脂質異常症
脂質異常症も、高血圧や糖尿病と同様に動脈硬化を進行させる原因になり、脳血管性認知症のリスクを高めます。
予防のためには、動物性脂肪を控えた食生活、運動習慣が重要になります。
普段の生活管理が
認知症予防に繋がる
生活習慣病は、バランスのよい食事、適度な運動、十分な睡眠、禁煙、節酒などで予防が可能です。
若いうちから生活習慣を正しく管理し、認知症の予防につなげましょう。
認知症は早期発見で
進行を遅らせることができる
認知症は、早期発見によって進行を遅らせることが可能です。
ただ、老化現象の1つとして現れるもの忘れと区別がつかなかったり、ご本人が認めようとしなかったりすることで、受診が遅れるケースが少なくありません。
ご自身が、あるいはご家族の方が以下のような初期症状に気づいたときには、お早目に当クリニックにご相談ください。
認知症初期症状チェック
- もの忘れの頻度が多くなってきた
- 記憶がすっぽり抜け落ちている
- 「通帳が盗まれた」といったことで家族を疑うことがある
- 趣味や好物に興味を示さない
- 生活がだらしなくなった
- 料理、計算などでミスが目立つ
- 約束を守れなくなった
認知症が疑われる場合は
当クリニックにご相談下さい
人生百年時代を迎えようとしている今、老後をいかに明るく、元気に過ごすかをお考えの方も多いかと思います。
生活習慣病やがん、身体機能の低下とともに、認知症も老後の充実度を左右するリスクのうちの1つです。初期の認知症かもしれない、最近もの忘れが多いなと感じたときには、お早目に当クリニックにご相談ください。早期発見・早期治療により、進行を抑えることが可能です。
認知症による介護疲れも
ご相談ください
家族の負担が大きい、長期の介護によって介護疲れに陥ってしまうことが増えています。
「どうして私ばかり…」「認知症の家族にイライラしてしまう」といったことが重なると、うつ病などのリスクが高まります。
介護で精神的に疲れていると感じたときには、お早目に当クリニックにご相談ください。