自閉スペクトラム症とは
自閉スペクトラム症(ASD)とは、社会コミュニケーションの障害、限定された反復的な行動を特徴とする発達障害の1つです。
上記のような特徴が極めて強いケースのみならず、程度は弱くとも少しでも生活に支障をきたしているケースまで幅広く自閉スペクトラム症に分類されます。
自閉スペクトラム症の症状・特徴
自閉スペクトラム症には、主に以下のような症状・特徴が見られます。
対人関係を築く難しさ
- 学校や職場、家庭などの暗黙のルールを理解できない
- その場の空気を読めない
- 相手との適切な距離が分からない
- 冗談を真に受けて傷ついてしまう
- 曖昧な表現を理解できない、行間を読めない
- 感情、気持ちを人にうまく伝えられない
特定のものに対しての
こだわりの強さ
- 関心を持てる領域が狭い、偏る
- 手順や時間に強いこだわりがあり臨機応変な対応ができない
- 予定、ルールから逸脱した変更に混乱する
- 1つのことに没頭すると周りが見えなくなる
- 興味のある領域で優れた成績や結果を出す
- こだわりの対象が変わると、それまでこだわっていた対象への興味が薄れることがある
その他の特性
- 音、光、におい、人との接触に敏感
- 気温に鈍感(寒い日に薄着でいる)
- 身体の動かし方がぎこちない
自閉症スペクトラム症と
広汎性発達障害はどう違うの?
自閉スペクトラム症は以前まで「広汎性発達障害」という名称でほぼ同義として使用されていました。
しかし2013年、自閉症障害、レット障害、小児期崩壊性障害、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害の総称であった広汎性発達障害という分類がなくなり、このうちレット障害を除いたものの総称を自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害)と定義するようになっています。
自閉スペクトラム症と
自閉症は一緒?
自閉スペクトラム症は「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」の総称です。つまり、自閉スペクトラム症のうちの1つが自閉症であるということです。
自閉症とは
自閉症は、社会性・対人関係の障害、コミュニケーション・言葉の発達の遅れ、行動・興味の偏りが特徴的な発達障害のうちの1つです。
自閉症の原因
現在のところ、はっきりとした原因は分かっていません。
ただし、先天的な脳の機能障害などが影響しているものと言われています。
ご両親のしつけ方や愛情不足、ご本人の努力不足によって起こるものではありません。
自閉症の特徴
社会性や対人関係を築くことの難しさ
社会性や対人関係を築くことに困難が生じることがあります。具体的な症状や行動は、以下のようなものが挙げられます。
症状や行動
- 目が合わない、反応や表情が乏しい
- 親の後追いをしない
- 場の空気を読めない
- 相手の気持ちを汲み取ることが苦手
- 受け身であり双方向の人間関係を結びにくい
- 臨機応変な対応が難しい
コミュニケーションや言葉の発達の遅れ
コミュニケーションや言葉の発達の遅れにおいては、以下のような症状や行動が見られます。
症状や行動
- 相手の言葉の行間を読むことができない
- 好きなものについて語るときなど過度に饒舌になる
- 曖昧な指示をされると混乱する
行動や興味の偏りからくるこだわりの強さ
こだわりの強さも自閉症の特徴です。主に、以下のような症状や行動を伴います。
症状や行動
- 同じ行動、遊びを延々と繰り返す
- 手順、ものの並びなどにこだわりがあり、いつもと違うと混乱する
- 特定の物事に強い興味を示し、その範囲が一般より狭い
- 興味のある領域においては優れた成果をあげることがある
- 興味のないことにはなかなか手をつけない
記憶力の強さ
優れた記憶力(特機に視覚的な記憶力)を持ち、学業や仕事、あるいは趣味などにおいて飛び抜けた結果を出すことがあります。
症状や行動
- 一度行った公園・遊園地の近くに来るとまだ見えないのに喜ぶ
- 不快な思いをした場所(病院など)の近くに来ると嫌がる
- おもちゃなどをもとの正確な位置に戻す
- その他体験した記憶をよく覚えている
「自閉スペクトラム症」という
考え方
自閉スペクトラム症は、生来的な特有の性質と捉えられることの多い発達障害です。
特有な性質、つまり特性であるため薬で治すことはできません(対症療法としての薬物療法は行われます)。そのため、患者さんの特性に合わせた教育的方法で支援を行います。この支援を「療育(治療教育)」と呼びます。療育によって、生活における困難を軽減することが可能です。
また、自閉スペクトラム症は、自閉症、アスペルガー症候群といった医学的な分類はありますが、それらを“虹”のようにさまざまな色が集まったものと捉えて「自閉スペクトラム症」と呼んでおり、患者さん一人一人に合った治療の提供がより重要なことだと考えられています。